夜、営業時間が終わって、ビールをおいしくいただき始めた時間に電話がかかってきた。
「メール自動印刷FX」というソフトを知っているかとおっしゃる。
知らないと答えた。
世の中には綺羅星のごとくソフトがあるのでそのすべてを把握することはできない。
電話の主は、私が知らないと答えたのにもかかわらず、そのソフトの設定を依頼したいといった。
検索をかけて「メール自動印刷FX」という名のフリーソフトが実在することは確認したので、依頼を引き受けることにした。
「メール自動印刷FX」をダウンロードして設定に関する文書を読んでみた。
メールアカウントごとに条件を設定して、受信したメールを印刷するソフトのようだ。
数日後、依頼人の会社に訪問して、パソコンの前に案内されたときに依頼人は、メールの添付ファイルも印刷できるようにしてほしいといいだした。
パソコンの画面には設定の文書が表示されていたので、読んでみたかと聞いた。
読んだという返事はあったが、中身は理解しなかったらしい。
「メール自動印刷FX」には、メール本文を条件に応じて印刷する機能しかないので、添付ファイルの自動印刷は無理だと説明した。
すると話を聞いていたらしい依頼人の上司と思われる人がそんなソフトはいらないといいながら後ろを通っていった。
実のところ、依頼人の会社で使われているOutlook2010には、メール本文の自動印刷を実行する機能がある。
設定の依頼はどうなるのかと思ったが、依頼人は「メール自動印刷FX」の設定を行うようにいった。
アカウント別に送信者名、件名、本文に含まれる文字列を設定して、条件にあてはまるメールを印刷する。
しかし、依頼は受信したメールはすべて印刷することだったので、条件判定は意味がない。
だが、「メール自動印刷FX」は条件が指定されていないと自動印刷を実行しない。
そこで、印刷条件のうち、本文の項目に「あ」「い」「う」「え」「お」というように５０音のひらがな、カタカナ、アルファベットなどを指定した。
これで受信したメールを自動印刷できるはずなのだが、メールサーバーを自動巡回させるとエラーが発生した。
手動巡回ではエラーは起きずに印刷してくれる。
フリーソフトなのでサポートはない。
設定文書にもバグ等でエラーが発生しても責任は取らないと書かれている。
依頼人はあきらめられないらしく、インターネットでエラーの解決法を探ろうとしたが何も見つからなかった。
この後、依頼人はインターネットで見つけた別のソフトの設定をお願いしたいといい始めたが室内にいた別の方から、そのソフトは頻繁にフリーズしますといわれて、ボツになった。
結局、依頼人の期待には応えられなかったが、Outlookで、添付ファイルの自動印刷を行うマクロの作成を受注して引き上げた。
